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>エスキース 「南荻窪の家」を通して

石川素樹(建築家・石川素樹建築設計事務所)

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イメージ固めが済んだある程度の段階でボリュームや構造を落とし込んでいく、思考の錬成が第3段階となる。ここでは暮らしを守る堅牢な大屋根とおおらかな空間構成とすべく、構成と構造のイメージに着手している。コストバランスはこの辺りでは意識下にあり、コスト・法規・構造という観点を含みつつ手を動かしていく。
住宅はおおむねコストの制約が厳しいこともあり、これらの要素を兼ねることでの一体性を意識し、なるべく同時に検討することでヒエラルキーが生じないように考えている。たとえば、四周に回された庇と大屋根の構造を一体に捉ることでの内外や開口部のプロポーション、特殊性に対して費用対効果を考慮した在来軸組による明快な骨格、木質化された表現、内包される空間、と複数の要素が相互に補完していくように検討を進める。
同時に思考する空間構成は、使い勝手はさることながら、集う場所・寝る場所・水廻り・迎え入れる場所等の距離感をふまえ、屋根に覆われた影であるその場所達にどういう光が望ましいかという観点から要素を排した簡素な矩形をベースに検討をはじめる。



南荻窪の家では、敷地の高低差から家族が集う場を中心に据え置き、半地下や屋根裏のような空間を設けた。個々の室にボリュームの差をつくり、高低差を結ぶ小さい階段部を緩衝帯として距離をとることで、ゆるくつながる場と個の場を確立し、それぞれに見合う光が入る構成としている。将来像を見据え、まだ小さい子どもたちの場所は、間仕切りを設けず自由に使えるようにし、今後室化させたり、また取り外したりができるようにもこのときに考えている。





また、この段階でまったく違う観点がないか検討することも行う。検討してきたプランが正かどうかの確認と肉付けの意味でもそもそもからを再度考えることが多い。こうした一連の流れの後にできあがったプランから最後の段階で詳細を検討していく。

思考を統合する最終段階では納まりや素材も検討していく。前段でさまざまなイメージは固まりつつあるので、寸法を落とし込みながらの検討となる。しかしながら、ノンストップで進めるがゆえの一人よがりが懸念されるので、完全に決め込むわけではなくある程度の段階でとどめ、後の基本・実施設計時に改めて検討する余白は残すようにしている。特に素材に関しては、途中段階までは白模型のように考え、どんな素材でも揺るがされないようプランに強度をもたせるべきだと考えている。
石川素樹

石川素樹(建築家・石川素樹建築設計事務所)

1980年 東京都生まれ
2007年 手嶋保建築事務所入所
2009年 石川素樹建築設計事務所設立


南荻窪の家
所在:東京都

設計・監理
建築:石川素樹建築設計事務所 
   担当/石川素樹・鈴木幸男
構造:mono 森永信行

規模
敷地面積:188.47㎡ 
建築面積:93.23㎡ 
延床面積:146.05㎡
建蔽率:49.47%(許容50%)   
容積率:77.49%(許容100%)
主体構造:木造
階数:地上2階
竣工:2017年3月