ここでは、屋根納まりが骨格やプランそのものに影響するため、意匠として構造の現しによる内外の表現と合理的な架構を念頭に検討している。庇から上を屋根とし、梁と一体となった燃代を考慮した変形校倉小屋組とすることでの堅牢な大屋根の表現やなしうるための在来軸組に至るまで、おおらかさや慎ましさといったことを構造事務所と共有し、密に検討することに時間を割いている。また、平屋プロポーションにより空と接する屋根が近く、簡素ではあるがボリュームのある形に対し軒先部がどうあるべきかが表現に影響することから、シャープな納まりによる屋根バランスをこの時点で考慮しはじめている。


これらのことをふまえ、この後の基本・実施設計でまた多少は動くものの、この時点で骨子と呼べるところまで検討を重ね固めるまでをエスキースとしている。
その場所のことを想起し、思考の整理・錬成・統合を通じてどうあるべきかを模索し、多角的アプローチを経ても淀むことのない建築を掴むまでをエスキースと捉えた。これらの一連の流れは、街の一部となるよう敷地の風土や地域性を考慮し、慎ましくも品のある中にあたたかい光と穏やかな風を取り入れ、寒さ暑さや風雨から身を守る堅牢な居場所をつくるという建築の原点としての素直な欲求を見つめ直すことになる。エスキースという思考は、これらの求めるべきことを本能の集積のように昇華させ、その場所に建つべき必然性と自立性を構築させるための始まりの思考でありすべてでもあると考えている。

